「クリスマス物語集」中村 妙子(編)
「クリスマス物語集」
中村 妙子 : 編訳
偕成社 , 216p. , 1979年
ISBN : 978-4035210603
早いもので、一週間後はクリスマス・イブ。
私はクリスチャンではないけれど、小学生の頃から毎年、この時季にこの本を読みます。
前半は宗教色の強い作品が並び、後半は、わくわくするような詩や物語が並びます。
そしてラストは、「サンタクロースっているんでしょうか?」という女の子の質問に、
ニューヨークの新聞記者さんが絶妙な返信をした、有名な社説で幕を閉じます。
厳かで神聖な、宗教色の強い前半の作品群も良いのですが、後半部分が特に好きです。
特に、お茶目なサンタクロースと素敵なパパさんが目に浮かぶムーアの詩は、リズムよく重なる言葉のテンポがまるで踊っているようで、冬夜空を見上げていると時折ふと思い出して、ついついにこにこしてしまう。まさに、一本のミュージカルのような詩です。
※意外と知られていない、サンタクロースのそりを引くトナカイたちの名前も、この詩には全頭分出てきます。(クリスマス映画「三十四丁目の奇跡」の中でクリス(サンタクロース)がトナカイの名を呼ぶシーンは、まさにこの詩そのものの印象で、ほのぼの嬉しかったです。)
一番お薦めしたいのは、わがままで強引で無茶苦茶で、でも何故か憎めない、妖精(ゴブリン)ラウリン王様の物語。三兄弟と一緒になって、「シュニッツル、シュノッツル、シュヌーツル!」の呪文を唱えたくなってしまいます。
※このお話に出てくる料理の、とても温かそうでおいしそうなことといったら…!もう、「この部分だけのためにでも読んで!」と言ってまわりたくなってしまうほど。
そして、最後の社説を読み終わると、「あぁ、今年もクリスマスを迎えられる」と思います。この社説を読んでいると、行間で子どもの頃の自分と去年の自分と今の自分が鼎談しているような気分になります。
欧米で長く語り継がれ読み継がれてきた一流の執筆陣による物語を、編者の中村さんがとてもきれいな日本語で訳しておられ、東逸子さんの挿絵もぴったり。
悲喜交々・光と闇・ハレの日とケの日・聖人と悪人…モチーフも内容も色とりどりで、どの作品も本当に面白いです。一時期絶版になっていましたが、復刊されて以降は、クリスマスの時期になると大きな本屋さんの歳時棚にちょこんと置かれるようになりました。
カバーを外すと、中は茜色の布張りに金の箔押しタイトル。触れているのが嬉しくなるような、とてもきれいな本です。
もし見かけたら、ぜひ手にとってみてください。
Merry Christmas!
目 次
「ちいさちゃんの箱」チャールズ=タズウェル 10
「ベツレヘムの夜」チャールズ=ディケンズ 24
「アマールと三人の王様」ジァン=C=メノッティ 31
「だれが鐘をならしたか」レイモンド=M=オールデン 54
「クリスマス・ローズの伝説」セルマ=ラーゲルレーブ 63
「ある農家のクリスマス」アーサー=M=ホプキンズ 87
「クリスマスツリーのねがい」キャロリン=S=ベイリー 101
「ハンスの星」マーガリート=バンス 109
「クリスマスの奇跡」ロバート=K=レビット 133
「クリスマスのまえのばん」クレメント=C=ムア 140
「セント・ニコラスの話」エリナー=ファージョン 148
「毎日がクリスマス」ウィリアム=D=ハウェルズ 159
「シュニッツル、シュノッツル、シュヌーツル」ルース=ソーヤー 182
「サンタクロースっているんでしょうか?」ニューヨーク・サン新聞「社説」 201
備 考
副題 : 世界の家庭で読みつがれている
クリスマスモノガタリシュウ
ナカムラ タエコ
※2012年10月、改装版が出ました。(ISBN : 9784035210603)