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アイコン 「青い鳥文庫ができるまで」岩貞 るみこ

 

9784062177948「青い鳥文庫ができるまで」

岩貞 るみこ : 作

講談社 , 230p. , 2012年

ISBN : 978-4062177948

 


 

あなたの手元にある、一冊の本。

その一冊が書店の棚に並ぶまでにどんな工程があり、

どんな人たちが関わっているか、ご存知ですか?

 

この本は、架空の一冊(「白浜夢一座が行く!」)が企画され書店に並ぶまでの

約十か月を物語仕立てで追いかけた、一見どたばた出版コメディ。

その実、ほぼノンフィクションの真剣出版小説です。

 


 

作者の岩貞るみこさんは、ノンフィクション作品の多い作家さん。

今回も四か月に及ぶ取材を元に、この作品を書かれています。

 

作家、イラストレーター、編集部、校閲、販売、印刷所、取次、書店…などなど。

一冊の本が、どれだけ沢山の人の手を経て作られているか。

青い鳥文庫の『児童書のまちがいは、万死に値する』という姿勢は今回特に際立って、

本全体を貫いています。

(この赤裸々さはある意味で、「児童書だからこそ」出来たことなのかもしれません。)

 

子どもはもちろん大人でも、本好きさんなら老若男女、

ドキドキハラハラわくわくしながら読み進むこと、請け合いです。

 


 

ここ数年、「本」がひとつの「流行」として持て囃されるようになりました。

本にまつわる仕事も「華」のように扱われ、マスコミに取り上げられることも増え、

以前よりメジャーになった職種も多いです。

 

けれどその一方で、雑誌等での紹介記事は「ハレ」の部分を書かれることが多く、

日常業務の大半は意外と知られる機会は少ないもの。

この本を読んで初めて知ったことが、私も色々ありました。

 

※例えば、この本で一番ページが使われているのが、入稿から流通直前までの過程。

あとがき含め230ページの本文の内、150ページがこのシーンに割かれていますが、

「本っ当にここまで書いていいの?」と思うほど細かく、かつ解りやすくまとめられています。

(折の種別と印刷機と紙の関連性とポイントなんて、初めて児童書で読みました…。)

 

そういう、「本に携わる人の日常」を知ってもらうにも、ピッタリの一冊だと思います。

 


 

P.S.(…という名のおまけ。)

まだ子ども向けの本がハードカバー中心だった1980年に創刊された、青い鳥文庫。

国内外で読み継がれてきた名作童話から、SF、ミステリー、歴史もの、ノンフィクション、

今人気のライトノベル系新作まで。様々なジャンルを揃えたラインナップで、

今も昔も小学生の活字中毒者たちをわくわくさせてくれています。

(挿絵の雰囲気が最近割合一定なので、もっと幅広いと嬉しいなぁとこっそり思いつつ…。)

これからも、楽しんで読んでいきたいレーベルのひとつです。

 

「青い鳥文庫」のシリーズは、(図書館用堅牢製本などの一部を除いて)基本的に新書サイズのソフトカバーなので、この場合の「文庫」は「コレクション」という意図なのだろうと思います。

 


 

備 考

アオイトリブンコガデキルマデ
イワサダ ルミコ

 


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